◆ 第12回 09月26日の例会報告 ◆ |
卓 話
「田原本町の放火殺人事件が問いかけるもの」
毎日新聞奈良支局 局長 井上 朗 氏
脚本家の三谷幸喜さんの15年程前の作品に、「12人の優しい日本人」という劇があります。法廷で12人の陪審員が交通事故に見せかけた殺人事件をめぐって有罪か無罪かを決める話です。最近この劇が再び注目を集めています。この作品が出来た当時は、アメリカの陪審員制度をモチーフに日本人の特性を描き出すというものでした。2009年7月、いよいよ日本でも裁判員制度が始まることが決まりました。市民の中から無作為に裁判員が選ばれ、実際の裁判に参加することになります。裁判員に選ばれますと、テレビや新聞など色んな形で事件や事故の報道に触れることになるかと思いますが、どのようにニュースを読んでいけばよいのか、またその裏側にあるもの、実態とどのように違うのかなど、今年6月に起きた田原本の放火事件を例にお話したいと思います。
田原本町で民家が全焼して数名が亡くなったらしい、という第一報を受け、私はすぐに現場に大勢の記者を派遣しました。この際、毎日新聞が撮った写真が、恐らくメディアの中では一番早かったと思います。現場は非常に悲惨なもので、死亡が確認できたのは三人、恐らくあと一人いるだろうということだったので、普通の火事だと判断して最初は名前を出して報道しました。しかし、行方不明の一人はいくら探しても出てきません。時間が経過する中、高校生の長男と連絡がつかないということになり、翌日の朝刊からは、あらゆることを想定しなければならなくなりました。最悪の場合、長男が家に火をつけて逃走したという可能性を考え、名前を出さない判断をしました。
このニュースが大きくなった理由の一つに、ご主人が勤務医で、行方不明になった長男が中高一貫の県内屈指の進学校に在籍していたということがあります。メディアの中で学校の名前はほとんど報道されなかったのに、恐らく皆さんの中で学校の名前を知らない人いないのではないでしょうか。やがて彼は京都で保護されますが、お父さんから医学部に行けと言われている、自分は頑張っているのになかなか成績が上がらない、など次々と我々の身近に迫ってくるような話が出てきて、どんどん続報が出て全国的なニュースになりました。
続報が出始めると、新聞社の世界では競争原理が働きます。奈良県警が連日取調べを行い、証拠も色々と出てきます。そうなれば私たちは可能な限りの記者を配置します。毎日新聞だけでなく、他の新聞も同じです。夜になると、捜査員の元へ向かって話を聞きます。彼らがどの程度話をしてくれるか、こちらで独自に調べたネタをどの程度認めるか、断片情報の勝負です。朝は、捜査員が出勤する前を狙います。その辺りから、各社の間でじわじわと差が出てきます。
ある新聞社が、母親の遺体に傷があるという記事を大きく取り上げました。刺されたか切られた可能性、つまり長男は火を放っただけでなく、母親に傷を負わせて逃げている可能性があるということです。これはとても衝撃的な記事でした。これを受け、私たちは内容の裏を取るために方々へ走るわけですが、ここで色んなボタンの掛け違いが起こってきます。捜査員たちは調べた結果について、なかなか本当のことは言ってくれません。
しかし時間の経過とともに、この情報にも奥行きが出てきます。この家は二階建てで、二階が激しく燃えて一階へと床が落下していました。梁から柱まで跡形がありません。亡くなった三人は二階で眠っていたので、当然遺体も一緒に下に落ちます。捜査員の証言が色々とあるのですが、二階が抜けて落ちていく中で、色んなものと紛れて遺体も下に落ちていったということでした。
傷と言っても、遺体の傷には色々な考え方があります。何冊ものファイルになった報告を見直してみて気づいたのですが、今回は警察が言う「傷」と、記者たちが考えた「傷」の認識にずれがあったのです。非常に細かいことですが、警察は「損傷」という言葉と「傷」という言葉を使い分けているのです。警察が「損傷」といった場合、二階から一階に落ちた際に外傷を負う場合、あるいは焼死した後に打撲のような形で傷が残る場合もあります。一方、「傷」と言う場合は、人為的なものであり、刃物あるいは凶器が使われているということです。
ところが三人の検死結果が出ると、三人とも一酸化炭素中毒で死亡したことが明らかになったのです。つまり、煙を吸い込んでそのまま亡くなっており、致命傷に達するような凶器を使った傷はないということでした。すると、それまで新聞に出ていた内容は全部打ち消されてしまいます。
このような誤解が起きてしまった原因の一つはやはり、他の新聞に負けたくない、少しでも前に進んだ話をニュースとして出したい、という記者たちの競争です。一度報道されてしまった誤解は、何らかの形でフォローしないといけません。そこで私たちは、同じ年頃の子供を持つ勤務医15人の意見を聞き、それを一覧表にして掲載し、記事はお蔭様で多くの方の好評を得ました。
この事件の報道を通じて、子供たちと日ごろあまり話をすることがなかった親子の間で、子供たちは自分が歩んでいくべき道を、また親たちは子供たちをどう進ませるべきか、もう一度よく考える機会になったのではないかと思います。文字通り今日のタイトルのように、「問いかけるもの」となったのではないでしょうか。
最初の話に戻りますが、裁判員制度の導入により、皆さんご自身が裁判員になられる可能性が出てきます。今日の私の話がみなさんにとって、日々の報道がどのような取材を経ており、どこまで確実性があるのかを見極めていただく手がかりになればと思います。 |
会長・幹事・委員会報告
会長報告
9月21日、秋の交通安全運動に多数の皆さんの参加をいただきありがとうございました。奈良県交通安全協会西奈良支部会長 有井様、ご苦労様でした。ロータリアンとして全員で違反のないように
注意したいと思います。
さて、今月は会員のおめでたいニュースがあります。ひとつは、藤川会員のご子息がご結婚なされたことです。もうひとつは、病気療養中の中井克彦会員のお見舞いに行ってきました。通院を続けながら頑張っておられ、午前中は会社にも出勤されているとのことです。
ロータリー財団委員会
ロータリーカードの募集をしています。シルバーとゴールドがあり、ゴールドは年会費が必要ですが、シルバーは無料です。15名の加入を目標としています。どうぞよろしくお願いします。
親睦活動委員会
来月はいよいよ月見例会です。10月10日(火)、午後5時半から奈良ホテルで開催いたしますので、皆様奮ってご参加ください。よろしくお願いします。
山歩き同好会
10月度の山歩き同好会を10月9日(月)に予定していましたが、希望者が少なかったので中止にしました。代わりに10月1日(日)に、赤目を歩くことになりました。当日朝、西大寺駅に7時10分集合です。多くの方の参加をお待ちしています。
幹事報告
本日例会終了後、第6回目の臨時理事会を開催します。議案は新入会員についてです。
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ニコニコ箱 本日46,000円 累計710,000円
(梶本佳昭君)
田原本に営業所を作りました。クタクタになりましたし、いっぺんに貧乏になりました。小林さん、辻岡さん、中井さんに感謝です。
(増井義久君)
梶本さん、田原本の道路清掃活動お疲れ様でした。また、田原本営業所オープンおめでとうございます。
(藤野城市君)
手術後、4ヶ月が無事たちました。意外と順調で喜んでおります。
(麹谷 瀞君)
太宰府R.Cの山歩き会に参加し、前回にもましての歓待を受けました。湯布院温泉と湯布高原の地鶏と豊後牛、由布岳の展望を満喫しました。
(小西敏文君)
毎日新聞奈良支局長 井上様、本日の卓話よろしくお願いします。
(高辻良成君)
井上支局長、いつもお世話になっています。本日の卓話、とても楽しみにしています。
(植倉一正君)
北村昭斎展、よかったですよ。興味ある方、10月1日までです。
(宮西正伸君)
先日、5年ぶりにハメを外す機会がありました。雑念が消え、仕事にも集中しております。ありがとうございます。
(中野久司君)
昨日は情報集会、楽しく過ごさせていただきました。ありがとうございました。
(矢追家麻呂君)(潮田悦男君)(山本尚永君)
ニコニコ協力。
(倉田智史君)
ニコニコ協力します。
(渡辺英孝君)
いつもニコニコ。ニコニコ協力。
(橋本和典君)
畑中さん、先日は大変お世話になりありがとうございました。おかげさまで私のカブが上がりました。来週からは10月の例会です。10月も「ロータリアン、いつもニコニコアイサーブ」でお願いします。 |
秋の交通安全運動
市民決起大会
9月21日 @学園前ホール
交通安全週間が始まりました。
社会奉仕委員会の呼びかけのもと
決起大会に参加いたしました
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本日のお客様
森本啓史君(奈良R.C) |
次週の例会 10月10日
月見例会@奈良ホテル 卓話「国宝・唐招提寺・金堂平成大修理について」
国宝唐招提寺金堂 修理事務所 副所長 植田哲司氏 |
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会報・IT委員会 |
増井義久、藤野城市、冨川 悟 |
Webmaster |
植村将史 |
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