「裁判所の裁判員裁判に対する取り組み」　

奈良地方家庭裁判所　所長　前田順司　氏

　裁判員裁判の対象となる事件は殺人、強盗、傷害致死や放火、身代金目的の誘拐など重大な事件です。裁判員には公判への立会いを行っていただく、つまり刑事裁判の審議に立ち会っていただくことが第一の仕事です。審議が終わると、被告人が有罪か無罪か、もし有罪ならどんな刑が相当かを裁判官と裁判員が一緒になって協議します。そして、裁判員と裁判官の多数決によって判決を行いますが、協議に基づいて裁判官が書いた判決の言い渡しに立ち会っていただきます。
　平成21年の裁判員裁判については、その前年、平成20年の12月頃に衆議院議員の選挙人名簿から、平成21年の事件について裁判員候補者を無作為で選びます。奈良では年間30件近い事件がありますが、1件につき裁判員候補者を50名ないし100名選ぼうと考えています。30件で仮に100名を選ぶと3000人の裁判員候補者の名簿を奈良で作ることになります。裁判員になれないと法律で規定されているのは、私たち裁判官や検察官、弁護士、国会議員や警察官などです。70歳以上の方で健康の心配などがある方や勉学が忙しい学生も、申し出があれば拒否できます。
　候補者名簿を作成した段階で、候補者に選ばれた旨を通知し、法に定める就職禁止事由があるかどうか、70歳以上や学生で拒否するかどうかの調査をします。実際に殺人事件が起こり、その裁判の日程が決まると、裁判員候補者名簿の中からクジで裁判員になる人を50名ないしは100名選び、選ばれた人に呼び出し状と質問票を送ります。この質問票と先ほどの調査との違いは、調査票は一般的な除外理由とか拒否事由を聞くものであり、質問票は実際に事件が起きて具体的な裁判の日程も決まり、その期日を前にして障害事由があるかどうか、具体的な被告人と顔見知りや知り合いではないかどうか、それら避けるべき明確な事由があるかどうかを質問します。それに回答して合理的理由があるとされた場合は候補者から削除します。その後行う選任手続き、つまり裁判官が一人ひとりあなたはどういう理由で忙しいのか、予定された裁判の日に全部来られるか、具体的な被告人について知り合いや親戚ではないか、不公平な裁判をする可能性がないかどうか、マスコミ報道等に影響されずに公平な裁判を出来るかどうかを質問します。その手続きの中で、仕事が忙しくて除外すべきだという人は除外します。質問票の段階で認められなくても、裁判官の前で話をして認められる場合があります。これらを経て、候補者を20人ほどに絞り、そこからクジで選任して裁判員を6名、補充裁判員をおく場合には数名選ぶ作業をします。法で定められている勤労者の辞退事由は、重要な用務を担っていること、非代替性、その従業員しか出来ないこと、その人が裁判に出廷することによって企業に著しい損害が生じることなどですが、最終的には当該裁判を行う裁判所の判断によって決まります。
　裁判員制度が成功する条件は、国民の意見や感覚を幅広く反映した裁判員に集まっていただくことだと考えています。そのために、なるべく多くの方に裁判員として積極的に参加してもらう必要があると裁判所は考えています。勤労者も家庭の主婦にとっても裁判員として参加しやすい環境づくりを進めること、また企業、経営者の方々にも従業員が参加しやすい環境づくりをお願いしていきたいと考えています。勤労者の方が裁判員として参加するための障害事由について意見を聞きますと、日程調整への要望などの他、裁判員として参加しやすいよう経営者、幹部の間に制度理解を広めてほしいという意見が多数を占めました。また収入減少の場合には経済的補償をして欲しい、裁判に出廷するために有給休暇制度が欲しい、裁判所には裁判員の仕事日程を考慮して欲しいという要望も多くありました。勤労者の方が裁判員として法廷に出廷するための法律の規定としては、労働基準法第7条に、「使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない」という規定があります。その公の職務の中に裁判員として法廷に出頭するのが含まれていると理解したいと思います。この労働基準法第7条の規定を受け、裁判員法71条では「労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことを理由として解雇、その他不利益な取扱をしてはならない」と規定しています。しかし裁判所としては法律がこういう規定をしていても十分ではないと考えています。勤労者の方の意見もありましたように、経済的な補償という観点には及びませんが、裁判員として出廷した人には旅費、日当、宿泊料を支給するという規定があります。これを受けて裁判所は裁判員に対しては1日に1万円以内の日当を支払う、出頭して裁判員候補者、裁判員に選ばれなかったけれども選任手続きに出頭した裁判員候補者には8千円以内の日当を支払うこと、また裁判員として裁判所に来る間に災害、通勤災害が起きた場合は公務災害として補償をするということも決めました。しかし、勤労者が裁判員として出頭することを有給休暇扱いにすることは法律では規定されていません。企業等、経営者の皆さんは就業規則を改正することによって従業員が裁判員として出廷するために有給休暇制度を是非設けていただきたいと思います。先日、南都銀行が銀行業界でも先陣を切って裁判員制度のための有給休暇制度を創設されました。
　最後に、最近企業の社会的責任やコンプライアンス、つまり法令順守が第一と言われています。先ほど労働基準法と裁判員法の規定を示しましたが、裁判員として出廷したときに不利益取扱をするということは、企業として法令順守をしない、コンプライアンスを守っていないということになり、批判されることになると思いますし、企業の社会的貢献という点からも、社会の治安を考える上で裁判員制度は非常に重要な役割を持っていると思います。皆さんの従業員が裁判員として参加しやすい環境をつくっていただき、社会的貢献としても積極的に参加を促していただく、この環境整備も社会的貢献のひとつです。
　裁判員制度は平成21年5月までに始まります。ご協力をよろしくお願いします。

ニコニコ箱　本日25,000円　累計585,000円

（多田実君）
前田様、本日の卓話よろしくお願い致します。
（高木伸夫君）
長期の欠席、お詫び申し上げます。残暑厳しいですがご自愛下さいませ。
（土谷宗一君）
連続欠席のお詫びです。
（藤野城市君）
ニコニコ協力！！
（谷川千代則君）
先日のコンペで前会長清岡杯をいただきました。有難うございます。幹事の皆様お世話になりました。
（大塩栄作君）
先日の親睦ゴルフコンペにおいて優勝をさせて頂きました。有難うございました。次回も頑張ります。
（野�ｱ隆男君）
所用にて、２週連続欠席致しました。申し訳ございません。

本日のお客様